―― 第三章 ⑦ ――
子育ては、
子どもを育てることだと思っていた。
でも今は、
私が育てられている時間なのかもしれないと思っている。
怒りを知った。
限界も知った。
崩れる自分も知った。
それでも私は、
ここに戻ってきた。
夫を敵にするのをやめた。
同じチームになれた。
完璧じゃなくても、
家族4人でやっていけると分かった。
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家族って何だろう。
支え合うことだろうか。
役割を分担することだろうか。
昔の私は、
ちゃんと機能する家族を
どこかで求めていた。
でも今は、少し違う。
家族は、
最初からうまくいくものじゃない。
ぶつかって、
崩れて、
それでもまた、
少しずつ形を作り直していくものなんだと思う。
家族って、
“完成された形”じゃなくて、
その時々で、
少しずつ形を変えながら
続いていくものなのかもしれない。
私はこの5年で
やっとそう思えるようになってきた。
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正直に言えば、
私は一度、
この人生を間違えたと思ったことがある。
母になる前の私に戻りたいと、
本気で思った夜もあった。
でも今は思う。
この人生でよかった。
いや、
「よかった」じゃない。
私はこの人生を、
選び直した。
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ある夜、
不思議な夢を見た。
夢ってすぐ忘れるのに、
これはなぜか、はっきり覚えている。
お寺のような場所で、
名前は何かと聞かれた。
手に持っていた紙には、
漢字で私の名前が書いてあった。
でも、
どう読むのが正しいのか分からなかった。
少し迷って、
私は、とりあえず読んだ。
分からないけど、まぁいっか。
そんな気持ちだった。
そのあと、
なぜか分からないけれど、
「私はもう、家族として生きていくんだな」
と、思った。
怖くなかった。
ただ、
静かだった。
目が覚めたあとも、
不思議と心が落ち着いていた。
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説明はできない。
でも、
なんかもう大丈夫だと思った。
母としても、
妻としても、
私としても、
未完成のまま、
これからも成長しながら生きていく。
名前の読み方が分からなくても、
とりあえず読んでみる。
分からないけど、まぁいっか。
それくらいの強さで、
ちょうどいい。
⸻
この人生でよかった。
それだけで、
私はまた、前に進める。
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