―― 第一章 ② ――
その夜、私は限界を超えていた。
子どもたちは隣で眠っていた。
私は、眠れなかった。
終わらせたい。
そう思った。
死にたい、というよりも、
このしんどさを終わらせたかった。
いっそ無になってしまえたら、
楽なんじゃないか、と本気で思った。
⸻
──同じ頃、私はある夢を見た。
子どもたちと3人で、
濁流に流されている夢だった。
3人でいるのに、
それぞれがバラバラに流されていく。
流れは速くて、
どうにもできなかった。
ただ、流され続けていた。
⸻
目が覚めたとき、
私は少しほっとしていた。
怖かったはずなのに。
ああ、夢だった、と。
流されていただけで、
何も決めなくてよかったからかもしれない。
でもその夜、現実の私は、
決めなくてはいけない場所に立っていた。
本当に終わらせたいのか、と
自分に問いかけた。
その瞬間、
取り返しのつかないことを
考えていると気づいた。
不妊治療をして、
望んで授かった命だったのに。
やっと会えたはずの我が子と、
こんな夜を過ごしている自分が、
本当に情けなかった。
未来のことは何も考えられなくて、
ただ、
この状況から解放されたい、
その一心だった。
「こんな母親でごめん」と
声を押し殺して泣いた。
こんな自分は、
許されないと思った。
⸻
子育ては、
想像していたより
何百倍も大変だった。
家族で穏やかに暮らす未来を、
どこかで簡単に思い描いていた。
現実は、
そんなに甘くなかった。
でもそれができない私は、
どこか欠けているのだと、
本気で思っていた。
⸻
私は弱かったんじゃない。
そう思えるようになるまでに、
少し時間がかかった。
でも、
あの夜の私は、
壊れかけていた。
追い詰められていた。
それでも、よく頑張っていた。
コメント