―― 第一章 ⑥ ――
上の子が2歳の頃、
私は育児に行き詰まっていた。
どう声をかければいいのか、
どう叱ればいいのか、
何が正解なのか分からなかった。
必死で育児本を読みあさった。
その中に、
「子どもに言ってはいけない言葉」というページがあった。
そこに並んでいた言葉は、
全部、
私が子どもの頃にかけられてきた言葉だった。
その瞬間、
まず浮かんだのは安心だった。
私がおかしかったわけじゃないんだ。
“アダルトチルドレン”という言葉に出会ったとき、
私はほっとした。
でも、そのあとに来たのはショックだった。
普通だと思っていたことが、
普通じゃなかったのかもしれない。
悲しみもあった。
そして最後に、怒りが湧き上がった。
どうして、と何度も思った。
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本気で、縁を切ろうかと考えたこともある。
話もした。
謝ってもらった。
でも、核心までは届いていないと感じた。
親もきっと
その時の精一杯だったのだと思う。
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私がいちばん怖いと
気づいたのは、
自分がされてきたことを、
無意識のまま
子どもにしてしまうこと。
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ある日、
「なんでできないの?」
そう言いかけて、はっとした。
それは、
私が言われてきた言葉だった。
私は、連鎖の途中に立っている。
私は過去を変えられない。
でも、
これからの言葉は選べる。
完璧な母にはなれない。
でも、
無意識のまま傷つける母にはならない。
私は、連鎖を止める。
それが簡単じゃないことも、
もう知っている。
それでも。
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