―― 第七章 ④ ――
最近、
ふと気づいたことがある。
夫が、
椅子から立ち上がるのが
少し早くなった。
子どもが
「ママ!」と呼ぶとき。
前は私が立つことが多かった。
でも最近は、
夫がすっと立ち上がることがある。
それを見て、
「あれ?」
と思った。
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偉そうに言っているわけじゃない。
むしろ私は、
シンプルに
「素敵だな」と思っている。
嬉しかったし、
幸せだなとも思った。
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少し前の私は、
夫に対して
怒りのようなものを
ずっと抱えていた。
大喧嘩した夜、
私は夫に
こう言ってしまった。
「育休中の4年間、
家族を顧みなかったことを、
私はこの先許せるか分からない」
言いすぎたとは
思っていなかった。
そのときの私は
本当にそう思っていたから。
でも同時に、
この「許せない」という気持ちが
この先何十年も
消えなかったらどうしよう。
もしもこの先、
本当に一生許せなかったら…
どうなるんだろう。
そんな不安も
ずっと心のどこかにあった。
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でもある日、
ふと気づいた。
あれ?
私、もう
許せている。
そう気づいたとき、
心から安心した。
私たちは
これからも一緒にやっていける。
そう強く思えたから。
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そういえば私は一度、
「もしかして私、
結婚自体向いていなかったのかもしれない」
と夫に言ったことがある。
あのときは、
本気でそう思っていた。
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でも今は、
少し違うことを思っている。
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結婚して、
家族ができて、
だからこそ経験できたことが
たくさんあった。
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もし違う人生だったら、
私はきっと、
今とは違う景色を見ていた。
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大変だったことも、
しんどかったことも、
全部含めて、
この人生でよかったと
今は思えている。
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そう思えたとき、
「許す」とか「許さない」とか
そういう次元じゃなくなっていた。
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この前、
夫が言った。
「ごめん!ホワイトデー忘れてた!」
私は思わず笑った。
「ペルレ買ってもらったから
もういらないよ。」
そう言うと夫は、
「毎年は買えないからね!」
と、焦って釘を刺してきた。
それもなんだか
おかしかった。
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もちろん、
夫が変わった部分も
大きいと思う。
でも、
私の見方も
少し変わったのかもしれない。
前は、
「やってくれない」
ばかり
見ていた気がする。
でも今は、
「やってくれていること」
にも
気づけるようになった。
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もうすぐ、
夫と二人だけで
出かける予定がある。
そのときに、
何気なく
「そういえば私、
もう許せてたみたい。」
「毎日ありがとう。」
そう伝えてみようと
思っている。
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