―― 第四章 ③ ――
区役所から封筒が届いた。
仕事復帰に向けて
初めて申し込みをした
認可保育園の決定通知だった。
私はそのとき、
そこまで緊張していなかった。
うちは43点あった。
兄弟同時入園申し込みの加点もあった。
申し込みのとき、
区役所の窓口でもはっきり言われていた。
「例年通りいけば、この点数なら
第一希望入れますね」
だから疑っていなかった。
第一希望は
家の裏の保育園だった。
特に人気があるわけでもない。
近いから。
それだけの理由だった。
点数を持っている家庭は、
もっと教育が充実している園を
選ぶ人も多い。
だからきっと
大丈夫だろうと思っていた。
実際、
私は第一希望の園しか
見学していなかった。
「ここで決まるでしょ」
そう思っていたからだ。
⸻
封筒を開けるとき、
夫も隣にいた。
「たぶんここだよね」
そう言いながら、
第一希望の園の名前を思い浮かべていた。
でも。
書かれていたのは
違う保育園の名前だった。
私たちは
思わず顔を見合わせた。
「え?」
びっくりした。
そして同時に思った。
「なんで?」
⸻
でも実は、
封筒は二通届いていた。
うちは子どもが二人いる。
保育園の決定通知は、
世帯主宛に
それぞれ別の封筒で届く。
実は、私たちにとって
一番大事だったのは、
第一希望に入れることより、
二人を同じ園に入れることだった。
まず開けたのは
上の子の封筒だった。
書かれていた園の名前を見て、
私は少し戸惑った。
「あれ?ここってどこだっけ」
そして次に思った。
「…これ、上の子だよね?」
ということは。
下の子は
どこになったんだろう。
下の子は一歳児クラス。
どこも激戦だと聞いていた。
私はもう一通の封筒を
すごくドキドキしながら開けた。
そこに書かれていた園の名前は
――同じだった。
その瞬間、
「同じか」
と、声が出た。
第一希望ではなかったけれど、
とにかく
同じ園でよかった。
きっとその安心の方が
大きかったんだと思う。
⸻
そのとき夫が言った。
「え?これどこにある保育園だっけ?」
私も正直、
あまりピンと来ていなかった。
でもよく見ると、
上の子が以前通っていた
認証保育園と
同じ系列の園だった。
それが分かったとき、
不思議と少し安心した。
「なんか、大丈夫そうだね」
そんな感じだった。
思い描いていた結果とは
違ったけれど、
なぜか
そこまでショックではなかった。
⸻
ちなみに、
今の保育園が
第何希望だったのかは
正直、覚えていない。
たぶん第二か第三だったと思う。
でも実際のところ、
そこまで
ちゃんと考えて書いたわけではなかった。
第一希望には
絶対入れると思っていたからだ。
だから、
あとは家から近い園を
とりあえず第五希望くらいまで
書いておいた。
そんな感じだった。
かなり
のんきだったと思う。
⸻
後で確認したけれど、
なぜ第一希望に落ちたのかは
よく分からなかった。
だから今思うと、
今の保育園に決まったのは
運命だったのかもしれない。
子どもたちは楽しそうだし、
先生方にも本当に恵まれている。
だから後悔はしていない。
……でも、
今でも雨の日だけは
「やっぱり
裏の保育園がよかったな」
と、少し思う。
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