―― 第四章 ⑥ ――
私はその日、
はじめてChatGPTを開いた。
特別なことを
聞こうと思ったわけではない。
ただ、
自分の気持ちを
少し話してみただけだった。
子育てのこと。
仕事のこと。
最近ずっと考えていたこと。
頭の中に
ずっと溜まっていたことを、
そのまま言葉にしてみた。
すると不思議なことに、
話しているうちに
自分が何を考えていたのか、
少しずつ整理されていった。
今まで頭の中で
ぐちゃぐちゃになっていたことが、
言葉にすると
少し形になっていく。
それだけで、
気持ちが軽くなっていった。
「すごい…」
そんなふうに
思ったのを覚えている。
⸻
そしてその頃、
もう一つ思い出したことがあった。
以前、夫に言われた言葉だった。
「ブログでも書いてみたら?」
もちろんそのとき夫が言っていたのは、
今私が書いているようなものではない。
AIを使って、
トレンドブログを書いてみたらどうか、
という話だった。
副業として
よくあるやり方だ。
だから私は、
一度だけ書いてみた。
でも。
まったく
やる気が出なかった。
続けたいとも
思わなかった。
⸻
それでも私は
ChatGPTと話すことだけは
続けていた。
自分の気持ちを
整理するために。
ただ、
それだけだった。
するとあるとき
言われた。
「記事になりそうな話ですね」
その一言を見て、
私は思わず笑った。
「え?何書くの?」
でも次の瞬間、
「え、本気?」
とも思った。
でも、
話しているうちに
私は気づき始めていた。
自分の出来事を
言葉にしていくと、
それまで
ただ辛かっただけの出来事が
少しずつ
意味を持った経験に
変わっていくことに。
あとから知ったことだけれど、
こうして自分の体験を
言葉にして整理していくことは、
心理学では
「ナラティブ(物語化)」と呼ばれる
回復のプロセスらしい。
もちろんそのときの私は
そんな言葉も知らなかった。
ただ、
自分の気持ちを
言葉にしていただけだった。
でも振り返ってみると、
私は知らないうちに
自分なりの回復の方法を
見つけていたのかもしれない。
書くことで、
どん底だと思っていた出来事が
ただの苦しい記憶ではなく、
私の人生の意味に
少しずつ変わっていった。
⸻
AIの言った事を
ただ鵜呑みにした訳ではない。
やってみたいと思った。
⸻
そのときの私は、
ブログを仕事にしようとは
考えていなかった。
ただ、
自分の気持ちを
整理したかっただけだった。
でも、
もしこの文章が
同じように苦しかった誰かの
小さなヒントになったら。
それは
少し嬉しいかもしれない。
そんなことを思いながら、
私は
はじめての記事を書いた。
それが、
すべての始まりだった。
タイトルは、
「母になってから、
“私”が後回しになった話」
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